「月の綺麗な夜にはとっておきの物語を」……銀色の丸眼鏡の縁に、冷たい月光が反射する。細い指が本を捲る音だけが現実と自分を繋いでくれる気がした。
朽ち逝く屋敷に棲む孤独な人形、静寂の谷に響く悲しいアリア、鏡に魅入られた優等生、世界を守る為に故郷を捨てた少年、永遠のときの狭間で恋人を待つ女…………彼女が紡ぐ5編の物語をお楽しみあれ。